前のテナントの内装・設備を引き継いで開業する「居抜き物件」。内装費を大幅に圧縮できる一方、確認不足による失敗も多い契約形態です。
この記事では、居抜きの基礎知識から、契約前に必ず確認すべき10項目、実際にあった失敗例までをまとめます。
そもそも「居抜き」と「スケルトン」の違い
事業用物件は大きく2つに分かれます。
| 種類 | 状態 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 居抜き物件 | 前テナントの内装・設備が残った状態 | 初期費用を抑えたい、早く開業したい |
| スケルトン物件 | 内装がなくコンクリート打ちっぱなしの状態 | 内装をゼロから自分好みに作りたい |
飲食店をスケルトンから作ると、内装・厨房設備だけで坪あたり数十万円かかるのが一般的です。15坪の店なら数百万円規模。居抜きならこの大部分を「造作譲渡料」(前テナントから内装・設備を買い取るお金)に置き換えられ、総額を半分以下に抑えられるケースもあります。
居抜きのメリット
- 内装・設備費が数百万円単位で浮く(飲食店の厨房設備は特に高額)
- 工事期間が短く、開業までのスピードが速い
- 前店舗の認知・動線をそのまま引き継げる場合がある

契約前チェックリスト10項目
- 造作譲渡料の内訳 — 何にいくら払うのか。設備の型番・年式まで確認
- 設備の所有権 — 厨房機器がリース品なら残債は誰が払うのか
- 設備の動作確認 — エアコン・給排気・グリストラップは劣化が見えにくい
- 原状回復義務の範囲 — 退去時に「スケルトン戻し」を求められる契約か
- 前店舗の撤退理由 — 立地起因の閉店なら同じ轍を踏む可能性
- 賃貸借契約の条件 — 家賃・保証金・契約期間・更新料
- 用途変更の可否 — 業種を変える場合、建物の用途・管理規約上の制限
- 近隣との関係 — 騒音・臭気クレームの履歴
- インフラ容量 — 電気容量・ガス種別・給排水管の口径
- 許認可の引き継ぎ — 飲食店営業許可などは原則引き継げず再取得
特に見落とされやすい3項目の解説
2. 設備の所有権(リース残債) — 「厨房設備一式込み」と聞いていたのに、製氷機と食洗機がリース品で、リース会社から残債の支払いを求められた——という失敗は珍しくありません。譲渡対象の設備は一覧表にして、所有権とリース契約の有無を書面で確認しましょう。
4. 原状回復義務 — 前テナントの「居抜き」の状態を引き継いでも、あなたが退去するときの契約が「スケルトン戻し」なら、前テナントの内装の解体費まで負担することになります。入るときだけでなく出るときの条件を必ず確認してください。
10. 許認可 — 飲食店営業許可・古物商許可などは、原則として前の営業者から引き継げず、自分で再取得が必要です。しかも設備基準は取得時点のルールで審査されるため、前店舗が営業できていた設備でも、そのままでは許可が下りないことがあります。保健所への事前相談が確実です。
ケーススタディ:安さに飛びついたCさんの失敗
例えば、脱サラして小さな定食屋を開こうとしたCさんのケース。造作譲渡料50万円という格安の居抜き物件を見つけて即決しましたが、開業後に次々と問題が発覚しました。
- エアコンが老朽化しており、夏前に交換費用が発生
- 排気ダクトの能力不足で、焼き物メニューを出すと近隣から臭いのクレーム
- 前店舗は「駅の反対側に大型商業施設ができて客足が激減」して閉店していた
「安さの理由」を確認しなかった結果、想定外の出費と、そもそも不利な立地という二重の負担を抱えることになったのです。
特に注意:「造作譲渡料が安すぎる」物件
相場より極端に安い居抜きは、設備の老朽化・立地の欠陥・撤去費用の付け回しであるケースがあります。安さの理由を必ず言語化してから契約してください。
内見のときは、次の質問を不動産会社・前テナントにぶつけてみましょう。
- 「前のお店は何年営業して、なぜ閉められたんですか?」
- 「設備の購入年と、直近の修理履歴はわかりますか?」
- 「この譲渡料の金額は、どういう根拠で決まっていますか?」
まともな物件なら、これらに具体的に答えられるはずです。回答が曖昧な物件は、いったん立ち止まる合図です。
居抜きに向く業種・向かない業種
- 向く: 前店舗と同業種・同業態(飲食→飲食、美容室→美容室)。設備をそのまま活かせる
- 条件つき: 業態が近い場合(カフェ→バルなど)。厨房の火力や排気能力の確認が必要
- 向きにくい: 業種が大きく変わる場合。設備の撤去費でスケルトンより高くつくことも
まとめ
居抜きは「使える設備」と「引き継ぐリスク」のセット販売です。チェックリスト10項目を1つずつ潰し、安さの理由を言語化できてから契約に進みましょう。
開業ジャパンでは、エリア別の居抜き・事業用物件情報を掲載する機能を準備中です。公開をお楽しみに。
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みんなの質問コーナー
この記事に寄せられそうな疑問に、マスコットがかわって聞いてみました
立地や設備の状態によって0円〜数百万円まで幅があります。重要なのは金額そのものより、譲渡される設備の内訳とリース残債の有無です。金額が大きい場合は内訳書をもらい、設備の年式や動作確認を必ず行いましょう。
居抜き専門の物件サイトや地元の不動産会社のほか、閉店予定の店から直接引き継ぐケースもあります。条件の良い物件は公開前に決まることも多いため、複数のルートで早めに情報収集を始めるのがコツです。
撤退理由の確認が大切です。立地そのものに原因がある場合は同じ失敗を繰り返す恐れがありますが、経営者の事情や業態のミスマッチが理由なら問題ないこともあります。時間帯を変えて人通りや競合を自分の目で確かめましょう。
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